玉三郎&仁左衛門の38年ぶり「四谷怪談」は呆然の演劇体験…勘三郎とは異なる“静けさの怨念”

2021/09/15 00:26配信【日刊ゲンダイ】

歌舞伎座(C)日刊ゲンダイ 歌舞伎座(C)日刊ゲンダイ

コロナ禍、歌舞伎座が客席を半分にし、上演時間も短くするなど、変則的ながらも興行を再開したのは去年の8月だったので、この異常事態も2年目になる。そのおかげと言っていいのか、玉三郎と仁左衛門の共演が相次いでいる。4月・6月の「桜姫東文章」に続いて、今月は「東海道四谷怪談」で、チケットは早々と完売した。

 緊急事態下なので「会話はご遠慮ください」「掛け声は禁止」と、もともと劇場内は静かなのだが、今月の「四谷怪談」は、ピリピリとした緊張感で、客席は針が落ちた音が聞こえそうなほど静まり返っている。

■玉三郎“お岩”の「四谷怪談」は38年ぶり

 玉三郎が「四谷怪談」のお岩を演じるのは1983年以来、38年ぶり。以後、お岩は18代目勘三郎が演じることが多かった。勘三郎の「四谷怪談」は笑いの部分もあり、客を怖がらせようというサービス精神にあふれたものだったが、今回の玉三郎・仁左衛門は、怖がらせようとはしない。化けて出る怨霊が恐ろしいのではなく、仁左衛門演じる伊右衛門の、人間を超越した冷酷さそのものが恐怖であり、その冷酷さに負けたお岩の怨念に、呆然となる。だから客席は幕が閉まるまで沸かない。めったにない演劇体験だ。

 宅悦を演じる松之助が、玉三郎・仁左衛門に拮抗し、全体をリアルな演劇として完成させている。

 第1部は、6代目歌右衛門の20年祭と7代目芝翫の10年祭で、成駒屋一門が総出演する。

「お江戸みやげ」は川口松太郎作の人情劇。先代の芝翫が何度も演じた、江戸へ出てきた行商の女を、息子で当代の芝翫が演じ、孫にあたる勘九郎も行商の女、七之助は人気役者の役。

 いちばん大きな拍手となったのが冒頭の中村福助。リハビリ中なのは誰もが知っているので、舞台に出るだけで激励の拍手が送られた。今回はセリフもかなり多く、歩いて舞台を去ると、さらに大きな拍手。福助の役は今回のために作られたもので、こういう趣向ができるのは歌舞伎ならでは。2番目は歌右衛門が好んでいた舞踊「須磨の写絵」で、梅玉、魁春、児太郎。

 時間の制約があるのでこの2つなのだろうが、歌右衛門の当たり役である「娘道成寺」とか「先代萩」「十種香」はできなかったのだろうか。

 第2部は幸四郎の「盛綱陣屋」と時蔵の「女伊達」だったが、感染者が出たことから2日の初日が開けられず、7日からとなったので、未見。歌舞伎に限らず、演劇やコンサートの中止・休演がなくならない。

(作家・中川右介)


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