横山剣インタビュー「『樹影』は再スタート、“シン・クレイジーケンバンド”の気持ちです」

2022/08/06 00:26配信【日刊ゲンダイ】

横山剣さん(C)日刊ゲンダイ 横山剣さん(C)日刊ゲンダイ

結成25周年を迎えて、通算22枚目のアルバム「樹影」をリリースした“東洋一のサウンド・マシーン”クレイジーケンバンド。CD1枚が持つキャパシティーいっぱいの全18曲。ボーカリストの横山剣(62)は「今回も、考える間もなくどんどんメロディーが生まれてきちゃいました」と話す。

■旅から横浜に帰ると、音楽が生まれます。

 ──剣さんは、脳内で次々と曲が生まれてくる体質とうかがっています。

 僕は7月生まれですけれど、その誕生月、梅雨の終わり、アジサイが咲き、ウグイスが泣き始める蒸し蒸しした季節になると、セクシーな、エロチックな音楽が脳のなかで鳴り始めますね。

 ──自然に音が生まれる。

 クルマを運転していたり、菜園にいるときもメロディーは生まれます。もちろん、プチトマトやスイカの音楽ができるわけではありませんけれど。たいがいは何かをやっているときです。あとは、旅から横浜に帰ると、音楽が生まれます。旅先で脳が刺激されて、活性化するのでしょう。かつての「タイガー&ドラゴン」は、運転していたらメロディーも歌詞も脳内で鳴り始めました。あの歌詞は目の前の景色のままですけれど。トンネルを抜けたら海が見えて、三笠公園があって。

 ──アルバム「樹影」のなかの曲は、どのように生まれたのでしょう。

「おじさん」という曲は、かつて近所の公園で見かけたオジサンをモチーフにしています。そのころ、女子高生が来ると、コートをバーン! と広げてチ○チ○を見せるオジサンがいましてね。僕が公園で見かけたオジサンもそちら系だと思って近づいたら、本気で泣いていたんです。失恋したのか、夫婦げんかで負けたのか。その思い出のシーンからメロディーが浮かびました。「ワイキキの夜」はコカ・コーラのCMの撮影でハワイへ行ったときの体験から生まれました。

 ──モデルの女性に、頬にキスされて、「イイネ!」と2人でポーズを決めるCMですね。

 あのモデルさんは、ルーマニア人だったかな、ヘビーな生活を経験してきたタフな女性でしてね。それでも、とても明るかった。「Never give up!」と励ましました。その言葉忘れない、って言ってくれて。現地スタッフもみんな親切で、あのときの思い出が音楽になりました。僕の住む横浜の本牧に「ブギーカフェ」というアメリカンダイナーがあって、そこの「本牧チャウメン」というハワイ風の焼きそばが好きでしてね。桜エビが香ばしくて、最高においしい。本牧チャウメンを食べると、今もコーラの撮影で訪れたオアフ島のチャイナタウンを思い出します。

■「樹影」は10代の頃に通った近所の喫茶店

 ──アルバムタイトル曲の「樹影」も何かがモチーフになっていますか。

 10代のころは作曲家を志していたんですよ。でも、誰も歌ってくれないだろうなあ、だったら自分で歌うしかないなあ、と。当時、ガソリンスタンドで働いていて、昼休みには近所の喫茶店で曲を書いたり、デビューしたときのためにキャッチコピーを考えたり。そのお店が「樹影」でした。

 ──「樹影」は2テイク収録されていますね。

 ちょっとフレンチやイタリアンな感じでね。子どものころにテレビでよく「水曜ロードショー」を見ていて、ミシェル・ルグランやフランシス・レイが大好きだったんですよ。2曲目の「?二樹影 -eye catch-」のトランペットはニニ・ロッソみたいでしょ。

 ──話をうかがうと、どんどん曲ができてしまうことがよくわかります。

 20曲以上が多いCKBとしては、やや少なめの18曲ですが、たくさん作ったなかから選曲するのはいつも大変な作業です。でも、コロナで煮詰まっちゃった時期もありましてね。去年は製作を休んでカバーアルバムを作り、この「樹影」で再スタートした感じです。

メンバーの努力が実り“ついにアタリが来た!”という気分

 “東洋一のサウンド・マシーン”クレイジーケンバンドの22枚目のアルバム「樹影」がリリースされた。バンドの本拠地は横浜。本牧のレストラン「イタリアンガーデン」で結成され、メンバーの多くが横浜在住だ。

 ◇  ◇  ◇

 ──「樹影」のリズムは重く、グルーブもカッコイイです。

 僕はいつもアルバムの収録曲の倍くらい新曲ができちゃいます。でも、数年前にちょっと煮詰まっちゃいましてね。曲作りを休みました。それで、かねてやりたかったカバー集をリリースしました。コロナ禍だったので、近所のカラオケ店で一人カラオケで練習しました。「樹影」は再スタートというか、今はやりのカタカナの“シン”をつけた“シン・クレイジーケンバンド”の気持ちです。ドラムスもベースも、いいでしょ。フェンダーのジャズベースに代えて、演奏のラインがわかりやすくなりました。ギターもキーボードも、楽器の音が全部抜けてきました。メンバーの努力が実り“ついにアタリが来た!”という気分です。コーラスのAyeshaも4年目で、バンドになじんできました。

 ──作曲にParkというクレジットがあります。

 Park君は以前から手伝ってくれていたベーシスト、アレンジャーで、今回は、かなり濃く参加してくれています。僕の頭の中で鳴ってもうまく音にできないもどかしさが、ずっとありましてね。わかりますか? トイレでしゃがんで、うんちが出そうでなかなか出ない。あんな感覚です。それがPark君によって解消されました。彼が僕の中の音を具現化してくれるんです。それで、メンバーとの音のコミュニケーションがかなりよくなりましたね。

 ──クレイジーケンバンドの音には、やはり横浜の香りがあります。

 曲の多くが本牧で生まれているからでしょうね。本牧の磁場が音に刷り込まれているんじゃないかな。でも、レコーディングは東京のスタジオです。ちょっとプラシーボ効果もあるんでしょうね。グランドキャニオンへ行ったときに、お土産屋さんで「Grand Canyon」というロゴの描かれた鹿の貯金箱を買ったんですよ。これはアメリカンだ! と感じましてね。ところが、日本に帰ってからよく見ると、「Made in JAPAN」って書かれていました。あれに近い気がします。僕たちは“Sound of Yokohama Yokosuka”とうたっていますが、録音は実は東京です。

■年をとってもカッコよくいられる秘訣とは?

 ──ところで、剣さんはいつもとてもおしゃれです。最近はシルエットもすっきりしましたね。

 週に一度、加圧トレーニングを始めました。確かに頬はすっきりしましたが、腹をもう少しへこませたいんですよ。何がいけないかは自分でわかっています。加圧の後スタバへ行って、コーヒーフラペチーノにシロップをたっぷり入れて飲んでしまうんです。

 ──お腹もまったく目立ちませんが。

 意識的に胸は鍛えています。胸が大きくなると、バランス的に腹がへこんだように見えるんですよ。

 ──なるほど。ほかに、60代になってもずっとカッコよくいられるポイントがあれば、教えていただけますか。

 うまくいっているかはわかりませんが、自分がカッコいいと感じている人の真似をしています。

 ──どなたですか?

 勝新太郎さん、矢沢永吉さん、山下達郎さん、谷原章介さんです。

 ──4人の方はまったくタイプが違いますね。

 はい。まったく違う4人と自分が混ざると、それが個性になる、という狙いです。勝新太郎さんが、真似ると学ぶを合わせてよく“まねぶ”と言っていましたが、真似ているうちにそれが本物になるのではないか、とね。楽曲のカバーもそうでしょ。ほかのシンガーの持ち歌でも、歌い続けていると自分のオリジナルに近づいていきます。

 ──いかがですか、うまくいっていますか?

 まだわかりません。でも、4人の方になり切るようにしています。横浜に、本牧山頂公園という、海と工業地帯と高速道路が見下ろせる丘があるんですよ。そこで僕はつぶやいています。オレもついにここまで上り詰めたか、と。実際には上り詰めていませんが、そこは、なり切ります。

(取材・文=神舘和典)


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