韓国で薄れてきた“東西対立”の感情…革新の地盤で保守の支持率が3割超に(児玉愛子)

2022/08/06 00:26配信【日刊ゲンダイ】

「キングメーカー 大統領を作った男」(C)2021 MegaboxJoongAng PLUS M & SEE AT FILM CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED. 「キングメーカー 大統領を作った男」(C)2021 MegaboxJoongAng PLUS M & SEE AT FILM CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

【奇妙?単純? 韓流の方程式】#90

 今月12日に公開予定の韓国映画「キングメーカー 大統領を作った男」を見ると、「勝てば天国、負ければ地獄」といわれる韓国の大統領選は、正攻法で勝てそうにないことがわかる。むしろ、ダーティーな奇策のほうが効果的なのではないか。

 映画は若かりし頃の金大中元大統領と、当時その選挙参謀だった厳昌録の実話に基づいたフィクションだ。“選挙の鬼才”といわれた厳昌録の「1票を得るより、相手の10票を減らす」という戦術によって、金大中氏は地方の補欠選挙で初当選。晴れて国会議員となる。

 映画の中でも描かれているが、韓国の大統領選で顕著だったのが、東西の“地域対立”だ。南東部の慶尚道は「保守系」の地盤。

 一方、西南部の全羅道は「革新系」が圧倒的に強い。1997年に野党の大統領候補として初当選し、政権交代を実現させた金大中氏は、長く保守劣勢だった全羅道の出身だ。

 こうした地域対立は古くからあり、新羅と百済の戦いまでさかのぼるという声もあるが、激しさを増したのは71年の大統領選。現職の朴正熙大統領が強敵の金大中氏に勝つため、東西の対立感情をあおったのだ。

 勝利した朴正熙元大統領は慶尚道を優遇し、多額の資本を投下。98年に金大中大統領が誕生するまでの37年もの間、政治の実権は慶尚道出身者が握り、全羅道の出身者は冷遇された。

 これは政治に限った話ではない。民間企業でも地域差別は存在し、就職や昇進といった局面で全羅道出身者は劣勢を強いられたという。98年に金大中政権が誕生してからは、反対に慶尚道出身の人たちが被害意識を持つようになり、やはり対立は続いた。

 状況が変化したのは2002年の大統領選で、慶尚道出身の盧武鉉氏が全羅道を地盤とする民主党の候補として立候補してからだ。以来、極端な対立感情は薄れたといえる。

 そもそも若者にしてみれば、古くからの対立感情より重要なのは自分たちの生活だ。今年の大統領選でも革新勢力が強い全羅道で保守系の支持率が31%に達する現象が起きた。

 どれほど選挙戦術に優れていようとも「嘘ついた口はクソを食う」。嘘をつくと悪いことが起こるという韓国のことわざだが、大統領には悲惨な末路が待ち受けているのが既定路線になっている。選挙戦でついた嘘の報いなのだろうか。

(児玉愛子/韓国コラムニスト)


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