吉沢亮主演『国宝』ヒットの最大の理由とは――? 映画興行収入ランキングトップ10(6月27~29日)

2025/07/02 22:00配信【サイゾー】

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最新の全国週末興行成績ランキング(興行通信社調べ、6月27~29日)で、吉沢亮が主演を務める実写映画『国宝』(6月6日公開)がV2を達成した。


吉沢亮主演『国宝』、「実写邦画史上でもトップレベルの評価」!


6月30日発表の全国週末興行成績ランキングで首位をキープした『国宝』は、歌舞伎界で「人間国宝」となる男が生きた波乱万丈の人生を描いた同題原作(著・吉田修一氏/朝日新聞出版)を吉沢主演で実写化。上映開始から4週目の週末3日間も観客動員41万2000人、興行収入6億1000万円と絶好調で、累計興収も32億円を突破した。


映画ライターのヒナタカ氏は、ヒットの理由について以下のように分析する。


「『国宝』は普段は映画館に行かない人の日常的な会話の中でも話題に出るほどで、平日も高年齢層で劇場が賑わうなど、絶賛に次ぐ絶賛の口コミ効果が異例のレベルまで達している印象があります。吉沢と横浜流星という、共にNHK大河ドラマで主演を務めるほどの若手実力派俳優の共演という時点で注目度が高かったのですが、2人がライバルや親友といったシンプルな言葉では到底表現しきれない、"血か才能か"で争いつつもお互いに高め合う役を、文字通りに全身全霊で演じきっており、それこそが実写邦画史上でもトップレベルの評価を得た最大の理由でしょう。横浜が扮するのは軽妙で人懐っこい跡取り息子で、"血"には恵まれています。一方で吉沢は才能に恵まれるものの、"血"を渇望し、自身の幼い娘の目の前で"悪魔との契約"を宣言します。その残酷なまでに対比的な関係性も、見る人を強く惹きつけたのでは」


なお、吉沢は撮影期間を含めて、歌舞伎の稽古に1年半を費やしたことが明かされている。


「その奮闘もさることながら、吉沢の演技は、日本一の歌舞伎役者になる目的のために"狂気"に満ち、それ以外のことは"虚無でしかない"男という難役にこれ以上のない説得力を持たせており、もはや言語化できないほどの衝撃がありました。今週末7月4日公開の『ババンババンバンバンパイア』では打って変わって『裏返った声で愛を叫んだり"キレ芸"を披露する』というコメディキャラに扮しているので、『国宝』と続けて見た観客が口走るであろう"ギャップ"も楽しみですね」(同)


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初登場5位『でっちあげ』、6位『フロントライン』と対照的な"アプローチ"とは?


そのほか今週は、2位にはブラッド・ピットが主演する『F1(R)/エフワン』、5位に綾野剛主演の『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』、8~10位にはアニメーション映画『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』、『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』、『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』がそれぞれ初登場(いずれも6月27日公開)。


日本でも大ヒットを記録した『トップガン マーヴェリック』(2022年公開/最終興収138.1億円)を手がけたスタッフが集い、モータースポーツ「F1(R)」に挑むレーサーたちの姿を描いた『F1(R)/エフワン』は、初日から3日間で動員24万2000人、興収4億1900万円をあげた。


本物のサーキットコースで撮影するなど「F1(R)」の全面協力で制作され、世界チャンピオンにも輝いた現役「F1(R)」ドライバーのルイス・ハミルトンがプロデューサーとして参加していることもファンの間で注目されている。


5位スタートとなった『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は、ジャーナリスト兼ノンフィクション作家・福田ますみ氏のルポタージュ「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」(新潮社)を実写映画化。


綾野が演じるのは、児童への体罰を告発されるも「すべて事実無根の"でっちあげ"」と完全否定する小学校教諭・薮下誠一。告発者で体罰を受けたとされる児童の保護者・氷室律子役に柴咲コウ、この事件を実名報道した記者・鳴海三千彦役に亀梨和也が起用されているほか、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫、小澤征悦、?嶋政宏らも出演。監督は鬼才・三池崇史氏が務めている。


日本で初めて"教師による児童へのいじめ"が認定された体罰事件を扱った作品ということもあり、鑑賞済みのネットユーザーからは「面白いと言うのは憚られるけどとにかくすごかった」「現実社会でも表に出てる、切り取られた情報だけを鵜呑みにするのは怖いと思った」との声が寄せられている。そのほか、「キャストの怪演に引き込まれた」「とにかく綾野剛が素晴らしい」といった評価も。


「3週目で6位とヒット中の『フロントライン』と同じく実話を元にした映画なのですが、アプローチが対照的なんです。『フロントライン』は医療従事者のみならずマスコミや船の乗客などの視点が交錯する"一方的な視点では語らない"内容になっていましたが、『でっちあげ』は"まずは一方的な視点で語ることで意図的にバイアスを生み出す"構成になっています。何しろ、冒頭では柴咲演じる律子の証言として、薮下による児童への差別発言、暴力、果ては自殺強要という、目を覆いたくなるほどに凄惨な光景が映し出されるのです」(前出・同)


また、三池監督らしい"痛み"を感じさせる暴力描写もさることながら、平然と暴言を放つ薮下役の綾野の"ヘラヘラした笑顔"も、「強い嫌悪感を抱かせることに成功しています」とのこと。


「冒頭で薮下は『最低最悪の殺人教師』だと思わせていたことから、その後の『でっちあげ』という主張を、観客は簡単には信じられなくなる。綾野の見事な演じ分けもあって、"同じ人には到底思えない"効果を生んでいます。そのため、実際の事件の報道と同等かそれ以上に"バイアスがかかっている状態"を、観客は身をもって体感することになるのです。だからこそ映像化の意義があったといえますし、事件当時の2003年よりも、SNSのある現代は、根拠のない言論に扇動されたり、誰かを安易に誹謗中傷してしまいかねない。そのバイアスの恐ろしさはさらに際立っているともいえます。エンタメとしてもすこぶる面白い作品ですが、その危険性を今一度知るためにも、多くの人に見てほしいですね」(同)


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ロングヒットの『うたプリ』、『名探偵コナン』がついにトップ10圏外へ


一方、テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)の映画シリーズ第36作目となる『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』は、8位スタートを切った。昨年公開の『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』は初登場1位を獲得し、上映開始から50日間で興収6億7000万円とシリーズ歴代最高興収を記録。今年は滑り出し好調とは言い難いが、2週目以降でどこまで数字を伸ばせるだろうか。


なお、今回はトップ10内に5つの作品が初登場した影響もあり、前回まで7週連続でランキング入りしていた『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX』(5月9日公開)、そして10週連続でランキング入りしていた『名探偵コナン 隻眼の残像』(4月18日公開)と2つのアニメ作品がトップ10圏外へ。


アイドルグループ・QUARTET NIGHTのライブを描いた『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX』は、6月23日時点で興収11億8000万円超えと伝えられていた。また、『名探偵コナン 隻眼の残像』は6月29日時点で累計興収143億円に達し、国内で上映された歴代映画の興収ランキングでは『天気の子』(19年公開/最終興収142.3億円)を抜いて17位に。16位には『天気の子』と同じ新海誠監督のアニメ映画『すずめの戸締まり』(22年公開/149.4億円)が待ち構えている。


全国映画動員ランキングトップ10(6月27~29日、興行通信社調べ)


1位:『国宝』

2位:『F1(R)/エフワン』(初)

3位:『リロ&スティッチ』

4位:『ドールハウス』

5位:『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(初)

6位:『フロントライン』

7位:『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』

8位:『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』(初)

9位:『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』(初)

10位:『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』(初)


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