米中貿易協議、なお平行線=TikTok合意も
【ワシントン、北京時事】米中両政府は、2日間の閣僚級協議で、懸案の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米事業売却で一致点を見いだした。ただ、本題の貿易協議は平行線のまま。協議のさなかに中国政府が米半導体大手エヌビディアの独占禁止法違反を公表するなど、交渉の先行きは予断を許さない状況だ。 閣僚級貿易協議2日目の15日、中国国家市場監督管理総局はエヌビディアが独禁法に違反したと発表。「さらに調査する」とも表明し、米国を圧迫した。ベセント米財務長官は協議後「タイミングの悪さ」に不快感を隠さなかった。 中国国営新華社通信によると、対米貿易協議の実務責任者を務める商務省の李成鋼国際貿易交渉代表は協議後に記者会見を開き、「中国企業への抑圧継続と懸念の解消は両立しない」と米国を改めてけん制。中国側にとって、エヌビディアの違反公表は「国民に弱気と見られないよう、ティックトックの合意を政治的に覆い隠す」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)狙いとの見方もある。 米中は10月末から韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせたトップ会談の開催やトランプ米大統領の訪中を模索。これを控え、中国側が米側に配慮を示した可能性もありそうだ。 米側が非難を続けるロシア産原油の購入も、いったん棚上げされたもよう。米政権は協議の直前、先進7カ国(G7)や北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、中国への関税引き上げを促し、圧力を強めていた。 ただ、ふたを開ければ「議論の中心ではなかった」(ベセント氏)。ティックトックの合意を優先し、米中の溝が深いテーマで対立を避けたいとの思惑も透けた。5月の閣僚級協議以降、両国のさらなる関税の引き下げなど、通商問題の解決に向けた議論は停滞感が否めない。 [時事通信社]