信認喪失ならインフレ高進も=70年代に先例―米FRB議長指名
【ワシントン時事】トランプ米大統領は連邦準備制度理事会(FRB)に大幅な利下げを露骨に求めている。FRB議長に指名すると発表したウォーシュ元理事について、トランプ氏は「長く知っている」と指摘。ウォーシュ氏が就任後、トランプ氏の意に沿うなら、金融政策の信認が失われ、中長期的にインフレ高進を招く恐れがある。 FRBの独立性喪失を巡っては、1970年代の「グレート・インフレーション(大インフレ期)」にあしき先例がある。70~78年に議長だった経済学者出身のアーサー・バーンズ氏は、就任前にニクソン大統領(当時)の顧問を務めるなど、ニクソン氏に極めて近かった。 72年の大統領選を控え、再選を目指したニクソン氏は金融緩和を要求。バーンズ氏もそれに応えた。大統領執務室の電話記録の研究によると、バーンズ氏は連邦公開市場委員会(FOMC)の前、ニクソン氏に金融緩和方針を伝え、本人から「素晴らしい」と称賛を受けた。 過度な緩和に後押しされた好景気も追い風となり、ニクソン氏は再選を果たした。しかし、73年以降、インフレはオイルショックの影響もあって急加速。インフレ率は一時10%を超えるなど、70年代を通じて高止まりした。バーンズ氏が率いた時代はFRBの歴史で「汚点」(元高官)とされる。 トランプ氏は金融政策について、「賢明な考えの持ち主」である自分にFRB議長は相談すべきだと公言してはばからない。昨年末にはSNSで「私に賛成できない人物は誰も、決して議長になれない」と言い切った。 トランプ氏の圧力は「口撃」にとどまらず、クック理事に前代未聞の解任を通告。パウエル議長に対しては、FRB本部改修工事に関する議会証言を巡り、司法省が刑事捜査の対象とした。 なりふり構わず金融政策の掌握を目指すトランプ氏。コーン元FRB副議長は昨年12月のオンライン会合で「バーンズは(ニクソン)大統領の成功を望み、インフレに対抗せず、10年に及ぶ物価高に見舞われた」と説明。「FRBの独立性が必要な教訓だ」と強調した。
