IOWNで「AI主権」確立=ネットの次の通信基盤へ―構想名付け親のNTT川添氏(2)・完

2026/09/27 14:23配信【時事通信社】

 ◇「全てがつながる」ことのリスク 急速に技術革新が進み、生成AIがものすごい影響力を及ぼしているのにベースとなるインフラがインターネットしかない世界は、少し課題があるのではないか。インターネットは全てがつながる仕組みだ。長らくオープン・イノベーションが重要と言われてきたが、全ての技術をオープンにしたら生成AIが容易に学習できるようになってしまう。クローズド・イノベーションも併用し、ソブリンティーを確保していくことが非常に重要な時代になった。 ―IOWNでは可能か。 光の中には波長があり、ある産業用の波長と別の産業用の波長を物理的に分離できるので、完全にクローズドな空間ができる。産業でも国でも企業でも個人でも、分離できる世界が実現できるのが光であり、IOWNだ。同じ目的や価値観を共有している人たちの中でAIをつくっていけば主権を守ることができると考えている。 ―安全保障面でも重要そうだ。 例えば、防衛省による(指揮統制システムへの)AIの活用に当たって、国産AIのサカナAI(東京)のシステムが候補に挙がっていると報じられた。先ほどのプロンプト・インテリジェンスの問題もあり、情報を処理するデータセンターも含めて可能な限り国産の技術で安全保障に関わる情報を守っていくことが重要だと思っている。 現在、データセンターは大部分がハイパースケーラー向けだが、AI主権を確保するためにも分けていく必要がある。多くの知見を生成AIに学習されてしまったら、そのビジネスの競争優位性が失われかねないし、研究する必要もなくなってしまう。そんな世界が見えてきている。 ◇遅延が命取りの時代に ―遅延の問題は、IOWNでは解消可能か。 今後、拡大が見込まれるフィジカルAIでは、AI同士のコミュニケーションが実現されることから、時刻や信号のタイミングを合わせるクロック同期(時刻同期)がものすごく大きな意味を持つ。自動運転でも車に搭載しているAIと交差点のAIが話し合いをするときに完全な同期ができていないと事故につながる。同期という点で(データの分割や電気信号への変換を行わない)光は最高のポテンシャルを持っていると思う。 ―データセンターへの活用の可能性は。 国のプロジェクトとしてワットビット連携が進んでいる。今まで、データセンターは可能な限り需要家に近いところに建設していた。その理由はやはり遅延時間だ。需要地に近い場所にデータセンターを作って、その場所でエネルギーを確保して対していくことが条件だったが、そういった場所で使える電力には限界が来ている。これを解決するのが端末からネットワークまで全てを光でつなぐ、IOWNのオール・フォトニクス・ネットワーク(APN)だ。遅延時間が大幅に低減され、立地条件の制約が外れると思っている。 グリーンエネルギーを豊かに発電できるエリアは、必ずしも都会にあるわけではない。今までは地方で生まれたエネルギーを都会に届けていたのですごくロスがあったが、地方で生まれたエネルギーを使って、地方に作ったデータセンターでAIの計算をし、その情報をお客さまに届けることが最も効率的ではないか。 ◇電力抑制、AI受容の鍵に ―普及の方策は。 20年1月にIOWNグローバルフォーラムを設立し、今は175団体近くが加盟している。NTT単独ではできないので、いろいろな企業とコラボレーションする必要がある。NTTはAIを含め新たな社会インフラを作る上で欠かせない存在になっていきたい。 例えば(半導体の回路を電気信号から光信号に置き換えて省エネや低遅延を実現する)「光電融合」技術に関して、NTTは世界になかなか存在しない技術を保有している。世界で初めて発明した光のトランジスタは(理論上は)従来の100分の1のエネルギーで動かすことが可能だ。昨年の万博でも装置を一部入れたが、現段階でも必要なエネルギー8分の1に抑えられる。 ―AIの重要性は分かるが、電力需要の急増には不安を覚える。 個人的には、AIが必要だからと、果てしなくエネルギーを使うようなことでは、やはり良い社会にはならない気がする。IOWNなどの技術で可能な限りエネルギー消費を抑えながら、AIによる価値提供を実現していく。そうした仕組みをつくることで、イノベーションへの納得感が生まれるのではないか。 IOWNの技術はこう役立っているのだと示していくのが重要だ。遠隔手術ロボットを動かすことで地方の病院でもスーパードクターの手術を受けることができれば、すごく役立つ技術なのだなと思ってもらえるのではないか。そういう積み重ねが非常に重要だ。 


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