相次ぐ再審無罪、高まる機運=「不服」禁止、証拠開示拡大が焦点―超党派議連と法制審に温度差
2025/11/16 14:53配信【時事通信社】
冤罪(えんざい)被害者を救済するための再審制度は刑事訴訟法で規定されているが、戦後一度も改正されていない。条文は19しかなく、実際の運用は裁判官の裁量に委ねられてきた。相次ぐ再審無罪を受けて法改正への機運が高まっており、捜査機関が保有する証拠の開示拡大や、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て禁止が盛り込まれるかが焦点となっている。 大きなきっかけとなったのは静岡一家4人殺害事件で死刑確定後、再審で無罪となった袴田巌さん(89)の事例だ。袴田さんは2014年、静岡地裁の再審開始決定とともに78歳で釈放された。死刑囚として33年余り拘束された結果、拘禁症を患っていたが、検察の不服申し立てにより23年まで再審公判が始まらなかった。 無罪につながる重要な証拠が検察側から開示されるまでには、最初の再審請求から29年以上が過ぎていた。 今年7月には、福井女子中学生殺害事件で服役した前川彰司さん(60)に再審無罪が言い渡された。この事件でも無罪につながる捜査機関の証拠が隠されていたことなどが明らかになった。 こうした問題を受け、再審制度の見直しを求める声が拡大。超党派の議員連盟は検察官の不服申し立て禁止や、申立人から請求があれば原則として証拠開示を命じることを盛り込んだ改正法案をまとめた。野党が国会に提出し、継続審議となっている。 これまで再審制度見直しに消極姿勢を示してきた法務省も、一転して法改正を視野に入れた議論を法制審議会に諮問。今年4月から刑事法部会での議論がスタートしたが、証拠開示拡大や不服申し立て禁止を訴える弁護士委員らは少数にとどまり、学者や裁判官、検察官ら多くは反対や慎重な姿勢を示している。
